内外国特許/実用新案/意匠/商標の出願/品種登録/中間処理/調査/鑑定/発明等の発掘/実施権設定等知的財産の活用に関する相談等その他知的資産経営に関する相談等

はじめに

Dr. Sohbe SUZUKI1987年に、「学術・技術・情報機能の集積と高度化」を図ることにより、新潟を含む東北七県を先端科学分野における日本の頭脳エリアと新産業開発の国際拠点にし、人類の繁栄秩序の構想に寄与していこうとする東北インテリジェント・コスモス構想が提唱されました。構想のねらいは、独創的な科学技術の開発により東北の振興だけでなく、わが国経済を活性化し、世界に情報発信しようとするものであります。構想の先鞭を切り1988年に設立された株式会社小電力高速通信研究所に私も参画させていただいた関係から、其れ以来、常に、東北地方の産業振興について関心を向けて参りました。

 

幸運にも、2010年1月に、私は、日本弁理士会(JPAA)会設青森事務所の運営弁理士に選任され、会設青森事務所内において、そうべえ国際特許事務所を運営してきましたが、2014年10月31日で その任務を終了しました。今後は、独立した特許事務所として、青森県知的財産支援センターの要請に対応しつつ、中小企業・ベンチャー企業及び各種研究機関等の各産業分野からの相談業務にも積極的に対応する所存でございます。

技術の普及と進歩

アメリカ連邦特許法が制定された1790年に没したベンジャミン・フランクリンは、特許制度は欧州の悪しき風潮であるとし、燃焼効率の良いストーブ、ロッキングチェア、遠近両用眼鏡、グラスハーモニカなどを発明したが、これらの発明に関する特許は取得せず、社会に還元しようとしたそうですが、果たして特許制度がなくて、技術の進歩は可能でしょうか。

 

例えば、ノーベル賞を日本人と米国人が共同で受賞し、米国人だけが世界各国に特許出願し、日本人が1件も特許出願していないとき、どのような権利関係になるのでしょうか。2010年ノーベル化学賞の例では、米国人のリチャード・フレッド・ヘック教授のみが特許を取得していました(例えば英国特許1,170,825号等参照。)。田中耕一氏は、2007年当時で、全部で17件程度の特許出願をされているようでありますが、ノーベル化学賞に関連する田中氏の特許は、英国の質量分析計大手などが引用して、4件が国際特許出願され、更に、これらの4件国際特許がそれぞれ12件・8件・9件・2件の特許に引用されているようであります。

技術情報の3つの性質

即ち、技術というものは、基本発明となる技術を基礎として、時々刻々改良され、改良発明や周辺発明が、次から次へと発生し、進歩するものであります。確かに、基本発明となる技術は、当初の一時期、ある程度普及可能でしょうが、たちまち、技術の進歩に伴い、他の改良発明や周辺発明が権利化されてくるので、基本発明となる技術が権利化されていない場合、その基本発明が使えなくなる性質を有しています。このため、技術の進歩といういみでは、特許制度は極めて重要な意味を持つのであります。

基本理念

楽天前監督の野村監督が座右の銘とされた「金を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上。されど金なくして事業成り難く、事業なくして人育ち難し」は、奥州市出身の後藤新平先生の辞世の句であります。今後、そうべえ国際特許事務所の運営をとおして、青森県の中小企業・ベンチャー企業及び各種研究機関等の各産業分野において、特許出願できる人材を育成できるように、努力したいと考えております。

 

20年間研究者として努めさせていただいた間、恩師西澤潤一先生からは「特許は精神力である」との薫陶を頂きました。又、三好保男先生からは、「弁理士とは『発明者を助ける』ものであるという人もいるが、むしろ、『助ける』のではなく『発明者を愛する』ものであるというべきである」と、うかがいました。本来、研究者や起業家は、命がけで研究や事業の展開をしているのであります。しからば、「発明者を愛する」弁理士も命がけであるべきであります。

 

伝教大師・最澄の言葉に、「径寸(けいすん)十枚これ国宝に非ず、一隅を照らすこれ即ち国宝なり」というのがあります。お金や財宝は国の宝ではなく、家庭や職場など、自分自身が置かれたその場所で、精一杯努力し、明るく光り輝くことの出来る人こそ、何物にも代えがたい貴い国の宝であります。「一隅を照らす」とは、一人ひとりがそれぞれの持ち場で全力を尽くすことによって、社会全体が明るく照らされていくということであります。弁理士は知財活動において全力を尽くすことによって、日本の産業界全体を明るく照らすことに貢献出来るのであります。

 

新約聖書のマタイ伝5章13節には、「あなたがたは地の塩である。だが、塩に塩気がなくなれば、その塩は何によって塩味が付けられよう。もはや、何の役にも立たず、外に投げ捨てられ、人々に踏みつけられるだけである」とあります。「地の塩」とわざわざ言い換えているのは、人々との結びつき、この世にあることの意味が強調されているらしいです。知的財産の活用や産業振興の主役は発明者であります。発明者と共に考え、発明者と共に悩み、発明者を愛することが出来、何らかの社会の役に立てる弁理士になりたいと考えておりますので、よろしく御願い申し上げます。

中小企業から特許出願の現状

2014年版中小企業白書によれば、2012年のデータとして中小企業は、企業数ベースで日本の全企業の99.7%を占め、事業所ベースの従業者数の比率では75.8%を占めている。経済成長の3大要因は、資本ストックの増大、労働力供給の増大及び技術進歩とされている。生産量をY,技術進歩をA,労働投入量をL,資本投入量をK,労働分配率をα,資本分配率をβ(=1-α)として、生産量Yをコブ=ダグラス型生産関数で表すと

コブ=ダグラス型生産関数

と表現できる。式(1)において、Aは、全要素生産性(TFP)或いは「ソロー残差」とも呼ばれる。式(1)を対数微分すると、

 

TFP成長率A=付加価値額増加率-労働分配率(α)×従業員数増加率-資本分配率(β)×有形固定資産増加率

 

となる。中小企業白書2004年版によれば、式(1)のA(技術進歩)を示すTFP成長率(%)は、従業員数50~300人の中小企業の方が従業員数301人以上の大企業よりも、大きいというデータが示されている。即ち、式(1)が示す技術革新の内容(技術進歩率)において中小企業の方が大企業よりも活躍していることがわかる。 しかしながら、以下に示す通り、中小企業からの特許出願の数は大企業に比して、極めて少ない。

中小企業からの出願状況

即ち、特許行政年次報告書2014年版によれば、2013 年の中小企業における特許出願件数は、33,090 件(前年比 1.0%増)であり、内国人出願に占める中小企業の出願件数比率は、12.2%(2012 年 11.4%)と極めて少ない。また、同報告書によれば、2013 年の内国人出願に占める中小企業の出願人数比率は、57.3 %(2012 年56.3%)と極めて少ない。

 

そうべえ国際特許事務所の運営に際して

青森県の産業構造に鑑みますと、製造業だけでなく、農林水産業を含めた、地域の特徴を活かした新産業創出のための知的財産戦略が必要かと存じます。農家の出身である私は、子供の頃父親が「ネギの種蒔機」の発明に夢中になっていたのを覚えています。農林水産業には、それを支援したり連携したりする電気・機械等の分野を含めると、相当な発明の芽が隠れていると思われますが、残念ながら、青森県からの特許出願の数が少ないのが現状であります。

 

農林水産業における特許出願では、農林水産業のやり方に関する「方法」の特許でなく、別の角度から、関連する機械・農薬等の「物の発明」の特許を検討する素養が重要になります。以下の図に示しますように日本の農業機械の生産額は世界第3位ですので、農業機械等の関連分野に注目することが重要になります。

 

知的財産を通じて、種々の分野における新事業等を創出し、青森県の産業活動における付加価値の向上を図るためには、特許出願が必須であります。中小企業・ベンチャー企業が、発明のアイデアや宝をいろいろと持っておられる場合が多いと考えます。実際に、従業員5名以下の小さな企業でありながら、年間10件程度の出願をした例もございます。しかし、多くの場合、中小企業・ベンチャー企業が持っておられるアイデアや発明の芽が、特許出願に結びついていないようです。それには、以下のような理由があるのかと思われます。

  1. (a) 特許法や審査の手順を知らない
  2. (b) 特許のクレームや明細書の文章が難しい
  3. (c) 特許性の判断が分からない
  4. (d) 出願や維持に必要な費用が高い
 

(a)の「特許法や審査の手順を知らない」につきましては、今後、セミナーや無料の特許相談等の機会において、詳細に、ご説明をさせていただく予定です。

 

(b)の「特許のクレームや明細書の文章が難しい」という点は、私ども弁理士の先輩の責任もあると考えています。即ち、特許の明細書等の文章は平易であるべきですが、古い書き方では、わざと難しくしているような場合も見受けられ、これにより、特許の明細書等に対する誤解が発生している場合もあるかと、思われます。ハーバード・スペンサーが、「最簡単な文章が最良の文章」であると説かれたとおり、文章に必要な条件は正確(correct)、平易(clear)、簡潔(concise)の3Cであります。いわゆる特許慣用語と称される難しい漢字を特許の明細書等に使用することをやめ、新聞の一般紙レベルの平易な用語で記載する技術をご紹介したいと存じます。

 

(c)の「特許性の判断が分からない」という点については、先ず、「特許電子図書館」で無料にて特許文献の検索が可能ですので、ご利用されることをお勧めします。又、中小企業・個人の方には特許出願を無料で調査する「中小企業等特許先行技術調査支援事業」等もございますし、会設青森事務所内での無料の特許相談等においてもご相談させていただく予定です。

 

(d)の「出願や維持に必要な費用が高い」という点につきましては、分割払いや、中小企業・個人の方が特許出願しやすい料金設定を含めた新しいビジネスモデルを考えております。また、「審査請求料繰延制度」や「審査請求料・特許の減免措置」の制度もございますし、その他公的な支援制度を受けられる場合がございますので、その都度ご説明させていただきます。

技術流出

ノーベル賞を受賞した日本人が、特許出願しなかったのは、外国の研究者の驚くところでありますが、その理由は技術を普及させるためというより、むしろ、日本の大学の教官が特許を出す雰囲気が従来なかったことや、特許出願の費用の問題であったと考えるべきでしょう。特許出願の費用に関しては、元特許庁長官荒井寿光氏(現東京中小企業投資育成株式会社社長)の説かれるように、15000円で特許出願する方法もあります。このため、特許出願書類の書き方の個人レッスンやセミナー等の種々の態様で、出願のサポート等もさせていただきます。

 

所長弁理士

工学博士

鈴木壯兵衞

[特許出願チャレンジ講座(青森県知的財産支援センター主催 青森県発明協会実施)]

 上述したような背景を鑑み、青森県は、知財技術のスキルアップ向上を図るため、県内の中小企業、農林水産業関係者や各種団体の職員等を対象に、特許出願書類作成技術について学ぶための特許出願チャレンジ講座を、一般社団法人青森県発明協会に委託して毎年、開催しております(講師はすべて辨理士鈴木壯兵衞が担当させていただいております。)

 

 実は、特許は形式(様式)さえ整えば、素人でも特許庁に出願するのは比較的簡単に可能です。しかし、特許は、単に出願すれば良いのではありません。以下の図に示す特許庁データからわかるように、特許出願された全出願件数の内で、実際に特許査定され登録されるのはその一部です。

査定率

 2000年~2005年では、特許出願された全出願件数の内で、実際に特許査定され登録された割合を示す「登録率」は28~29%でした。2013年の統計では登録率は84%に向上しています。
 特に、2001年10月1日以降の出願から審査請求までの制限期間が、特許法の変更により、それまでの7年から3年に変更された事情を考慮する必要があります。審査請求の制限期間が3年になったため、それまでの7年の制限期間であった特許出願と3年に変更された特許出願の両方が特許庁で審査される事態となったのです。

 

 以下に示しますように10年前に比して、現在の特許庁の審査の処理は速くなっていますが、それでも約80%が特許査定されるには7年ぐらいかかっていますので登録率のデータを読むのには注意が必要です。

特許査定されるまでの期間

 2006年以降の登録件数の見かけ上の増大は、登録される母数となる件数が審査請求期間が7年と3年の特許出願の件数が重複している効果が現れています。その証拠に、2014年以降は、審査請求期間が7年の特許出願の件数が減少し、7年と3年の特許出願の重複の効果が減少してきて母数が減少したため、見かけ上の登録件数も減少してきています。

 

 例えば、2013年の見かけ上の登録率が84%になっていますが、これは2013年に出願した特許出願のすべてが2013年の登録の対象ではなく、それよりも5年くらい前の特許出願が審査された結果、2013年になって、やっと登録されているということです。このため、2014年の見かけ上の登録率が70%、2015年の見かけ上の登録率が59%と低下してきています。

 

 しかし、以下に示しますように、青森県の登録率が全国の登録率より低い現実は直視する必要があります。特許はその特許出願の明細書や図面等の内容によって登録率が変わるのです。青森県の特許出願は品質があまり良くないということです。

特許登録率

 特許出願チャレンジ講座では特許出願した内容が、特許庁における審査で、確実に特許査定され、登録率を高くするためには、どのような戦略に沿って、明細書等を作成すべきかを指導します。
 又、特許の明細書や図面の作成をどのような手順で、何に注意して書くべきかという基本的な考え方を理解することにより、明細書作成の実践できる人材や明細書作成の指導者を育成することを目的としております。
 特に、従来弁理士しか書けなかった高度なスキルの要求される特許請求の範囲の記載の仕方についても、例題を用いてチャレンジする演習の時間を設けております。

 

 更に、特許出願チャレンジ講座は単に聞くだけの講座ではなく、レポートを提出する実践的な形式で進められます。又、特許出願チャレンジ講座の開催期間においては、特許出願チャレンジ講座の内容に関係するか否かを問わず、個別の特許案件について弁理士の無料相談を受けることも可能です。

講座スケジュール

 青森県内の各中小企業や農林水産業関係者等が、それぞれ、特許の明細書等が作成可能な人材を有するような環境を作ることにより、より安価な特許出願が可能となり、青森県から登録率が高い、即ち高品質の特許出願をすることが可能になります。又、同時に、特許出願の件数の増大が期待できるはずです。

 

 中小企業の経営者や農林水産業関係者を含んだ多数の皆さんの御参加をお待ちしております。

 

申込先・お問い合わせ 一般社団法人青森県発明協会(青森県知的財産支援センター内)

TEL:017-762-7351 FAX:017-762-7352 e-mail:aomoipc1@jomon.ne.jp

日本弁理士会(JPAA)会設青森事務所(2010年~2014年)について

日本弁理士会(JPAA)は、知的財産を通じて、地域産業の活性化に協力するため、2009年4月16日に、青森県と「地域の活性化と産業振興のための協力協定」を締結しました。知的財産を通じて、新事業等を創出し、青森県の産業活動における付加価値の向上を図らんとしたものであります。

 

青森県とJPAAとの協定協力事項の主な内容は

(1) 知的財産の普及啓発に関する事項、

(2) 知的財産の知識を有する人材の育成に関する事項、

(3) 知的財産の相談に関する事項、

(4) その他、地域産業の振興のための知的財産の保護と活用に関する事項

であります。

 

この青森県との協力事業を更に推し進めるため、日本弁理士会は2010年1月に弁理士の不在であった青森市に会設青森事務所を設置しました。日本弁理士会に登録された弁理士の内から複数の運営弁理士が選任され、この複数の運営弁理士が、この会設青森事務所内において、それぞれ独立した特許事務所を運営しました。複数の運営弁理士が、互いに調整して交代で、会設青森事務所の特許事務所に勤務してきましたが、2014年10月31日付けにてその任務を終了しました。青森県の特許出願件数は依然として低いものの、2012年度に全国最下位の状態からは脱却し、2013年度には全国第43位にまでランキングが向上しました。

特許出願県別データ

今後、そうべえ国際特許事務所は独立した特許事務所として、青森県の知的財産の総合窓口である「青森県知的財産支援センター」と連携して、知的財産の活用の促進とその普及へ協力し、更に産業振興のための各種事業へ協力致します。即ち、青森県知的財産支援センターの要請に対応しつつ、中小企業・ベンチャー企業及び各種研究機関等の各産業分野からの相談業務に対応致します。

 

なお、「日本弁理士会会設青森事務所」の開設後、日本で2番目の例として2011年1 月21 日に大分県に会設された「日本弁理士会会設大分事務所」は、2013 年11 月30 日をもって業務を終了いたしました。

「国際特許事務所」という事務所名について

特許協力条約(PCT)に基づく国際出願による特許出願」はありますが、「国際特許」 という用語は、厳密には存在しません。「国際特許事務所」という事務所名は、国際特許を扱う事務所という 意味ではなく、国際出願による特許出願を含め、国際出願以外の外国出願の他、日本の 特許庁に手続きする国内出願等を取り扱う特許事務所を意味します。特許は国際展開をしてこそ、意味を持ちますので、国際的な視野で出願することが好ましいです。因みに、中国では 「国際特許」の表記が、不正な表記として、法による処罰の対象となる見込みです。